國場 翼投手(埼玉西武ライオンズ)
國場 翼投手(埼玉西武ライオンズ)
おきなわ野球大好き新年スペシャルインタビュー
2017-01-15
ファームのデビュー登板でいきなりセーブを記録
「西武、國場翼。投手。第一工業大学」ドラフト8位で指名された國場翼。年が明けた1月には埼玉所沢で自主トレする彼の姿があった。テレビの世界でしか見たことのない栗山選手や秋山選手らを間近に見て興奮を覚える一方、しっかりやらないといけないなという責任感にも包まれた。
1位指名を受けた同級生多和田真三郎とキャッチボールをするなどして、徐々にプロの水に慣れてきたファーム公式戦、対DeNA3月15日に、早くも登板の機会が巡ってきた。
國場 「前もって行くぞと聞かされていたわけではありません。もちろんブルペンでいつ呼ばれてもいいように試合に備えてました。7回からのどこかであるかも知れないぞと」
7回もしくは8回にお呼びが掛かるかも知れないと準備していた國場。でも頭のどこかで8回の登板が無くなったことで、今日は無いかもと過ぎる。それも無理はない。ルーキーでいきなり、しかも勝っている試合で最終9回に登板するなんて、と。しかしその思いは良い意味で裏切られる。
國場 「コーチ達が『さぁ行こうか!勝つぞ!』とプレッシャーを掛けてきました(苦笑)」
先頭打者をいきなり歩かせたが次打者を併殺打に斬る。白根にはセンター前へ運ばれたが嶺井博希をライトフライに斬り無失点。ファームながらプロ初登板初セーブをマークした。
國場 「先頭打者に四球を与えてしまったけど結果ゼロで抑えられて良かった。マウンドに上ったらバッターとの勝負に徹しているので。プレッシャーを感じる暇は無かったです」
一軍との格の違いを感じる
その後も順調に経験を重ねていった國場。ジャイアンツ戦であの大打者と対戦した。
國場 「阿部慎之助さんと対戦することが出来て。真剣勝負の真っ直ぐを完璧に捉えられました。全然格が違う。一球で仕留める力の凄さを感じた。これが一軍レベルなのだなと」
一流の打者ほどミスショットをしない。もっと真っ直ぐを極めないといけないのだなと、改めて思い知らされる貴重な勝負の場となった。そして國場は自身の「ゴールデンゾーン」へと突入していく。
黄金の二週間
ファーム公式戦7月29日対ヤクルトスワローズ戦。2-2の同点で迎えた7回、國場の出番がやってきた。結果は打者3人を相手にノーヒット2奪三振。8回裏の味方の逆転に繋げる好投を見せた。
翌日、同じくヤクルト戦では2点リードの7回に登板し三者凡退。8回も跨ぎ、ヒット1本を許したが併殺打に斬る。さらに圧巻だったのが8月2日の北海道日本ハムファイターズ戦だ。先発のウルフが5回、2本の連続長短打を浴び突如崩れる。
一死一・二塁のピンチでベンチが火消し役に選んだのは國場だった。二者連続空振りの三振!その裏味方打線が1点を勝ち越すと6回、そして7回と登板。打者9人に対しヒット僅か1本、4つの三振を奪い且つ無四球と満点ピッチングで勝利投手になった。飛ぶ鳥を落とす勢いの國場は7日の楽天戦、8回にも登板する。
國場 「大学時代148キロを記録したけど、それに勝るような感覚がありました。150キロが出ているとは思わなかったけど、指に凄く掛かる感じ。今の状態で一軍に上がりたいなぁと強く思いましたね」
事実スピードガンは、國場自身マックスとなる151の数値を叩きだしていた。中崎がヒットと四球を与えて無死一・二塁のピンチでマウンドへ上がった國場は、1つの四球を与えたものの3つのアウト全てを三振で締めた。
11日のヒートベアーズ戦でも9回に登板した國場の、ヤクルト戦からの二週間は無敵のピッチング。5試合で7回と2/3イニングを投げて打者26人に対しヒット3本。課題の四球癖も無くたった一つ。奪った三振は二桁の11個を数えていた。もちろん無失点だ。その数日後、國場は一軍へ合流した。
國場 「監督、コーチ、選手。本当に凄い人達に囲まれて。不安は無かったと言えば嘘になるけど、自分を信じた」
プロに入って、周りの選手たちを観察。それぞれが自分のルーティンを持っていた。それを学んだ國場も自らのルーティンを確立。
一軍に上がっても、全体でのアップが終わり個人に戻ると作ってきたルーティンを崩すことなく調整を続けた。
プロ一軍初登板。初めての打者から三振!
8月21日の千葉ロッテマリーンズ戦。チームは4-8で負けていた。
國場 「4点差もあったし終盤。もしかしたら声が掛かるかなとブルペンで思っていました。友達はテレビで見ていてくれたらしく、緊張していたぞと言うのですが僕の中ではそれは余り無く、というかマウンドに向かう途中でそれが全て消えたのです」
一軍初登板。ルーキーに緊張するなという方が無理だが、そんな國場の背中を押したのがファンだった。
國場 「國場頑張れ!と歓声が聞こえたのです。ホントに嬉しかった」
やもすると敗戦濃厚な終盤にファンはため息をついていたかも知れない。さらにドラフト8位のルーキーなんて、一軍のファンは名前さえ知らないのではないか。しかし違った。間違いなく温かい声援で自分の名前を叫ぶファンがそこにいた。助っ人ナバーロが打席に立っていたが、國場に怖いものはもう無かった。
國場 「ストレートでポンポンとストライクが取れて最後はスライダー。でもその三振で焦った訳ではないですが、少し力が入ったのかも知れません」
その後連続四球を与えてしまったが、田村をセカンドゴロの併殺打に斬り初登板無失点。ラッキーでしたと謙遜の言葉を発した國場だが、ゴールデンゾーンの勢いを更に増し加えたかのような投球が出来ていたからこそ、一軍でも通用したのだ。その2日後、今度はオリックスバファローズ戦に登板した國場の前に同郷の大城滉二がいた。
國場 「絶対、真っ直ぐを狙っていましたよねアイツ(笑)」
同郷だからこそ真っ直ぐで勝負したい。千葉ロッテ戦を経た國場は気持ち的に楽に入れたが、前の打席でエース岸孝之からタイムリーを放っていた大城に二塁打を許してしまう。しかしその1安打のみで2つの三振を奪い無失点。余談だが、同郷の先輩山川穂高にも2点タイムリーが飛び出すなど、このゲームは県勢選手の活躍が光った試合でもあった。
みやざきフェニックスリーグでも快投
2016年の公式戦が全て終了した10月、國場の姿は宮崎県にあった。若い選手が出場し経験を積むみやざきフェニックスリーグ。ここでは勝ち負けはそれほど関係なく、どれだけ自分の課題を持って出来るかがカギでもあった。ストレートの制度を高めたいと思った國場は、真っ直ぐとフォークだけで投げた。
國場 「5試合5イニングでトータル1本のヒットしか打たれなかったのは自信になりました」
そんな國場の躍動を見つめていたのが、ライオンズの新監督として就任したばかりの辻発彦氏であった。11月の秋季キャンプでも気に掛けてくれたという。主に中継ぎで活躍したルーキーイヤーだったが、2017年は先発のマウンドに立つ國場の姿があるかも知れない。
では最後に國場への質問と彼の答えを紹介しよう。
第一工業大学での最優秀投手も秋のリーグで、プロでも8月から上がってきた。夏場以降に強い
國場 「本当に夏場に強いという意識はありませんが、春先よりも夏場に調子が上がってくるのは確かかも知れません」
ファームでの22試合で26四球。四球を減らすことが新しい年の課題でもあるが
國場 「自分で上手く行くときとそうでないときの差が激しい。それが与四球に繋がってしまう。身体の突っ込み具合やボールの回転、角度のズレが最初は極小かも知れないが、ミットに収まるときには拡がる。岸さんなどは、ファンの皆様から見ると線が細い感じに思うかも知れませんが、下半身は強く馬力が凄い。フォームのバランスを良くしていけば、減らせると思う」
自分の武器であるストレートについて
國場 「MAXが目標ではない。アベレージとして常に140キロの後半が出せるようにしたい。そのためにも、ウェートトレなどで今の100%の力をもっと上げることが出来れば、85%から90%で140後半を投げ続けることも可能なんじゃないかな」
目標とする投手は
國場 「増田達至(2016年28セーブをマークした守護神)さん。もちろんピッチングも凄いけど、ピンチでも動じないポーカーフェイス、平常心でいられる精神力を見習いたい」
自身、どのようなピッチャーになりたいか
國場 「とにかくライオンズが優勝出来るように。それに貢献できるピッチャーになりたい」
沖縄のファンや野球少年たちへひとこと
國場 「僕も小学校からピッチャーをやらせてもらい、夢を追い掛けることが出来た。だからこそ、今の子供たちや後輩たちにも夢を見せられるようなピッチャーになりたい。何があっても諦めないで欲しい。君が好きになった野球をずっと続ければ夢は叶う!」
天願小学校(天願フェニックス)で、尊敬する父と共に歩み始めた國場の野球人生。県大会ベスト8を経て、あげな中学では一転セカンドとして海邦銀行杯で優勝し全日本少年野球大会で準優勝。具志川高校にて一年生大会で再びマウンドに立った國場は「セカンドも楽しかったが、やっぱり僕は根っからのピッチャーなんだなと思った」と本職である投手へ戻る。
第一工業大学の3年時、秋季リーグで最優秀投手とベストナインを獲得してプロへの道を開いた。それだけではなく、1年目での一軍登板も果たした國場には、その名の通りに翼を広げて舞い上がる新年が待っていると信じる。
大好きな父が付けてくれた名前。強い獅子に翼が増し加えられることで"ウィンゲット・ライオン"となる。ライオンズの一翼を担う投手へ。國場の果てしない野球道はまだ始まったばかりだ。(當山)